2018年05月22日

デコーダでFMEAをやってみる

電機屋の中でも、ちょっと変わったことをやっている人たちがいます。機能安全屋です。彼らは、設計時にハードウェアとソフトウェアの故障解析を行って、電気製品が誤作動したときにどういう現象が起きるかを全ての故障パターンを解析して、まとめるということをやってます。他にも認証会社と技術交渉をする、レビューするとか眠たくなるようなことばっかりやってます。まあ、自分も数年、担当しましたが。




デコーダを燃やした原因を知りたい、というkumaさんの叫びを見たので、システムFMEAで簡易的に故障解析をやってみようと思います。たとえば、以下は典型的なサウンドデコーダのブロック図です。

FMEA_DCC1.png

まず、故障条件を以下のように決めました。これで、上記のブロックにおける故障パターンは1/4になりました。

・ショートは1本だけとする(複数本の同時ショートは考えない)
・オープン故障も無視する(DCCデコーダの場合には動かないだけなので)
・過電圧、過電流はとりあえず無視する(部品の性能にも依るので)

ではやっていきます。

(1) TRK1,2に、MOTOR1,2の線がショート→MOTOR1,2の内部が故障
(2) TRK1,2に、FL1,2,3の線がショート→FL1,2,3の内部が故障
(3) TRK1,2に、SPK1,2の線がショート→SPK1,2の内部が故障
(4) MOTOR1,2にFL1,2,3の線がショート→FL1,2,3 or MOTOR1,2の内部が故障
(5) MOTOR1,2にSPK1,2の線がショート→SPK1,2 or MOTOR1,2の内部が故障
(6) SPK1,2にFL1,2,3の線がショート→FL1,2,3 or SPK1,2の内部が故障
(7) MOTOR1,2の両信号がショート→保護機能あり:セーフの場合アリ、なし:故障
(8) SPK1,2の両信号がショート→保護機能あり:セーフの場合アリ、なし:故障
(9) FL1,2,3の両信号がショート→故障する
(10) TRK1,2の両信号がショート→コマンドステーション側が保護機能動作、ショート箇所が焦げるため、ショートの場所がデコーダ内部だったらデコーダは故障。

※上記はざっくりシステムFMEAです。本当は、基板の全部品のオープン、ショート、発振の故障を解析します。

上記を見れば、たいていのケースで、特定箇所が壊れる(可能性がある)ことが分かります。特に言えば、出力に入力電源(=線路)をいれると壊れます。テーマパークの大行列アトラクションで、警備員さんがうっかり、行列の流れを出口につないでしまい、出口からたくさんの人が入ったら、アトラクションの運営がパンクするのと一緒です。

FMEA_DCC2.png

何で壊れるのかというと、出力回路が、たいてい、GNDやVCC(5Vや12V)に間接的に繋がっていたりするので、ショートの電流が流れるからです。で、半導体内部の回路パターンは、ショートの電流・発熱に耐えきれないのでパターンを焼いて、終了というわけです。

なお、出力が2本ある場合に、これがショートしても耐えられるデコーダもあります(ワンコイン、スマイルデコーダ、MP3デコーダなど、モータ制御ICを使っている場合)。ただし、デジトラックスのデコーダでいうと、出力保護機能が付いてない単純なMOS出力なので、出力をショートさせれば壊れます。5V電源もツェナーダイオードでかなり省略しているケースもあります。デジトラックス以外のメーカーはよく分かりませんが、中国のDCCデコーダメーカーLaisdccもデジトラックスに近い思想なように思います。

保護機能付ける・付けないは、各社の設計指針や経営判断(コスト重視or耐久性重視)があるので、良い悪いは判断できませんが、メーカーによっては割り切っているケースもあるのは事実です。
連合では、部品点数を減らす事や過去のトラウマで壊れるのはイヤだ、ということで、コストは数倍上がりますが、保護機能の付いた部品を随所に使ってます。もちろん、それでも防げない故障パターンは多いですが、無いよりは良いと考えてます。

対策は、配線ミスをいかに防ぐかという点しかありません。会社のKYK(危険予知活動)とかと一緒で、いかにポカミスを防ぐか、しかありません。

・テスタで、取り付けた後は、配線、ピンにショートしていないか入念にチェックする
・第三者がチェック(ダブルチェック)
・出力を絞ってテストする(電流安定化電源とか、コマンドステーションの電流制限。DSmainには1A単位の電流制限機能が搭載済)

Nゲージで細かな作業が多いのと、日本ではコネクタを標準搭載してないケースが多いので、これがデコーダの焼損事故が増えやすい原因になってるんじゃないでしょうか。

なお、私は配線の絶縁には熱収縮チューブをいろんなサイズでたくさん買って使ってます。便利なので、みなさんも買っておいた方が良いです。100円ショップにも売ってますし、秋月にもあります。山ほど欲しい人は、aliexpressでどうぞ。

softtube.jpg

他の部品のついでにAliexpressで買いましたが、これだけ入ってて5.3USD。
posted by yaasan at 06:29 | Comment(1) | 鉄道模型
この記事へのコメント
HO以上の金属車両の場合は、分解して組み立てるときにライト関係のコードがどこかに挟まって 絶縁皮膜がめくれて銅線が露出して車体にふれてショート、デコーダーが昇天するというパターンが、配線ミスより多いように思います。少なくとも自分はそうです。
プラ車両は、こういうことがおきないので気が楽です。

サウンドトラックスは、デコーダー焼いても、半年以内なら無償交換、それ以降も定価の半値ぐらいで有償交換してくれますが、送料はこちら持ちなので安くはないですね。故障品送って有償交換してもらうくらいなら、ディスカウント模型店で新品買ったほうが安いぐらいです。
Posted by ゆうえん・こうじ at 2018年05月23日 00:31
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